Facta non verba ~鋼殻のレギオス~

 

 ROYAL ORDER

「怖くないんですか?」
 短い問いかけに振り返ると、敏捷とはいえない動作に応じて、じゃらりと鎧が音を立てた。あまり変わらない視線の高さに、少年の姿がある。相手の姿を認めて、リヴァースは小さく笑顔を浮かべた。幼さの残る声を聞いた時点で、顔を見ずとも相手が誰かは分かっていた。最年少天剣授受者のレイフォン・ヴォルフシュテイン・アルセイフだ。この場所に入ることが出来る「子供」は、王族の子弟を含めても指折り数えるほどしかいない。
 汚染獣駆逐の報告をしに女王に謁見した帰り道だ。共に出撃したカウンティアはまだ医務室にいて、汚染物質による火傷などの治療を受けている。従って報告は彼一人で行うことが多い。
「なにが?」
「金剛剄です」
 怖くないのですか、と再度繰り返された問いに、リヴァースは困ったような笑顔を浮かべた。
「怖いよ。というより、戦うこと自体が好きじゃないよ、僕は」
 天剣授受者にまでなっておいて言う台詞ではないかもしれないけれど、本気で彼はそう思っているのだ。そもそも防御に特化した剄技を使うリヴァースだから、戦うとなっても『自分から攻撃』は出来ない。ひたすら相手の攻撃を回避し、守り続けるのだ。
「でもあなたは戦場に立っている」
「ティアがいるからね」
 丸っこい指先を顎にあて、小さく笑う。
 攻撃の為に防御をすてたカウンティアの戦闘スタイル――もとい、まるで皮膚と同じように感じるほどにまでに薄く薄く作られた専用の戦闘衣は、度重なる超高速移動には耐え切れない。必ずと言っていいほど、戦闘中に衣服は大なり小なり破損し、汚染物質による傷を負う。
 守る事を一切考えない、ある意味潔すぎる戦い方は、彼女一人では成り立たない。
 一撃必殺ともいえる刃を繰り出すためには、相手の虚をつくことが最も確実な手段である。
 カウンティアが攻撃だけを考えることが出来るように。
 彼女を傷つけるものから守るために。
 共に勝利を得るために。
「彼女と一緒なら何でも出来るよ」
 大切な相手を自らの手で守れるならば、敵の牙の前に我が身を晒すことなど何でもないと思うのだ。
「・・・よく分かりません」
「まだレイフォンには難しいかな」
 医務室の扉に手をかける。レイフォンは数歩手前で立ち止まっている。中までついてくる気はないようだ。――まぁ扉越しに聞こえるカウンティアの怒号というか、暴れる様子を耳にすれば、正しい判断だろう。
「誰よりも何よりも大事な存在ができたら、多分僕の気持ちが分かると思うよ。それじゃ、またね」
 手を振り、扉の中へとリヴァースは姿を消した。
「ティア」
 衝立の影からひょっこりと顔を出すと、医療用ベッドの上で不貞腐れた様子で座り込んでいたカウンティアが振り返った。
「リヴァース! どこ行ってたのよ!」
「うん、ごめんね。陛下に報告に行ってた」
 出撃の度に、何度となく繰り返される会話。
「治療は終わった?」
 寝台の脇まで歩み寄り首を伸ばして見上げると、こくりと一つ、頷きが帰ってきた。ちょっとだけ視線を横にずらすと、治療を担当していた医者も「全て終わりました」との返事を返してくる。ここで「医者の言うことのほうを信じるの!?」とか口論が起こる日もあるのだが、今日はそれは発生しなかった。多分、リヴァースが訪れるまでに鬱憤は(扉越しに聞こえた怒声で)発散し終えたのだろう。
「それじゃ帰ろう」
 手を繋ぎ、歩き始める。
 身長があまりにも違うので、ちょっとリヴァースが釣り上げられているように見えない事もないが、二人は気にしない。こうやって今日もまた、戦いを終えて、一緒に家へ帰ることこそが幸せのひとつ。
 どれだけ汚染獣の屍骸を積み上げても敵わないものがある。この手のひらに伝わるぬくもりを守った事こそが、リヴァースの心に積み重なる勲章なのだ。


- END -


久々に! 短編UPです!! しかも、何故かカウンティア&リヴァースという、どう考えても脇役な方々の・・・。ま、まあ、うちのSSは脇役っぽい方々が妙にPUSHされているのは、いつものことなのでいいか!(開き直り)
さて、とりあえずなんとか今月も月2本の自己ノルマを達成できました。間にキリ番SSを挟んでいるので実質は3本なんですが、そういう企画もの以外で2本、なんとか更新し続けて行きたいものです。
あとは・・・アニメですが、なんだか今後見るのか見ないのか不明になってきました。録画は続けてますけどね。原因はこの間の放送(合宿の回)。見ていて「えー・・・」という気分になってしまい、途中で不貞寝してしまったのです。結局、その後の続きを見ていないのでうろ覚えだし、後での挽回があったか謎なままなんですが、天剣授受者について、ミィは週刊ルックンの編集長から聞いた、見たいな事を言ってた(と思う)んです。あまつさえ「元の都市でなにかあってツェルニに来た」(※意訳)的な事も言ってたような・・・。
それがなんだかショックで、続きを見る気をなくしてしまったのです。
こんなにレイフォンが元・天剣授受者ってことが知れ渡っていていいんでしょうか。
その辺って、割と重要な要素な気がするんですけどね。
まぁ近況としては、そんな感じです。あ、DVD2巻は買いました。

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