Facta non verba ~鋼殻のレギオス~
君のいない、この場所
- Next Page: ボディ・ランゲージ
- Prev Page: TEA TIME ARABESQUE
機関部でニーナが姿を消して、もうすぐ五日が経とうとしていた。
その日レイフォンは、ニーナの代理で生徒会の会議に参加していた。
通常、こういった集まりに小隊が関わる場合、隊の長である小隊長が参加する事になるし、それ以外の者が呼ばれることは殆ど無い。隊長不在の十七小隊は会議の欠席を連絡したが、生徒会から「代理となる者を寄越すように」と呼び出されたのだ。
小隊長の集まり、つまりは上級生ばかりという会だ。だから隊内の最上級生であるシャーニッドに行って欲しいところだが、間の悪いことに、シャーニッドは発熱で早退したという。それでは...と様子を窺ったフェリには、あの冷ややかな視線で「行きませんよ」と断言されてしまった。会議には生徒会長が参加する。兄と同席などとんでもない、という所だろう。
残りはダルシェナだが、ダルシェナは隊に加わったばかりである事を理由に断ってきた為、消去法でレイフォンしかいなかったのだ。レイフォンだってカリアンと顔をあわせたくはないし、最下級生で参加するのは腰が引けたが、他にいないのだから仕方ない。
ちなみにハーレイが参加という選択肢は無い。彼は武芸科所属ではないので、小隊員つまり戦闘員として数えられていないのだ。
(なんか、居心地悪い)
鈍感王と揶揄されるレイフォンだが、それは主に恋愛感情をベースにした機微に疎いだけであって、武芸に関わるものはなんとなく分かるのである。特に年齢に起因する侮りと、彼の実力との差から生まれる複雑な思いが合わさった視線は、グレンダンにいる頃は常日頃受けていたものだ。
しかし、時間の長さが慣れに繋がるわけではない。
ましてや、ここは本来自分がいるべき場所ではないのだ。じわじわと、背筋を違和感が這い上がっていく。
(でも――)
ただ一人、三年生で小隊長となったニーナ。三年生はレイフォンから見れば「先輩」だが、六年制のグレンダンではまだまだ下級生と呼ばれる立場である。
現状ツェルニの小隊員は上級学年の者が圧倒的に多い。勿論下級生がいないわけではないが、あくまで少数だ。そんな例外ともいえる存在がリーダーとなる第十七小隊は、一般生徒からの人気は(判官贔屓なのか)非常に高いが、他の小隊メンバーからは煙たがられているのだ。レイフォンの強さが知れ渡って以降は多少緩和されたようにも感じる時もあるのだが...。
自ら主導権をを取りたいという野望は、武芸者には多かれ少なかれあるはずだ。それは自分が他者を支配したいというだけではなく、己の属する流派や、自分自身の腕前を他者に認められたいという気持ちでもあるのだろう。
小隊員は、なりたいからといってなれるわけではない。ツェルニで学ぶ学生の数に対して、小隊の枠は少ない。欠番となった小隊を含めて隊の総数は十七。多くもないが、数的には半端な数値だ。
何故か? それは小隊新設を許されるだけの実力がある者がいないからなのだろう。だから、若くして「強さの証」である小隊を新しく作り上げたニーナたちへ、他の武芸者は複雑な思いを抱くのだろう。
(隊長もこういうものを感じていたのかな?)
判らない。
――だから知りたいと思う。
ツェルニを守りたいという願いを胸に、ひたむきに前へ進むニーナの姿は、レイフォンには眩しすぎて時々その背を見つめるのが辛くなる。だけど、同じだけの強さで光に惹きつけられるのだ。
学園都市にいる間はずっと、彼女の掲げる旗を見つめながら進むのだと思っていた。武芸の道を進む事への戸惑いは消えないが、それでも「ツェルニを守りたい」という気持ちには共感ができたし、そのために戦うことは厭だと思わなくなった。
でも、今ここに彼女はいない。
レイフォンは机の下で強く拳を握り締めた。短く切った爪が肌に食い込み薄い傷を残す。
「痛ッ...」
反射的に漏れた声は、沈黙と停滞に満たされていた会議室へ予想以上に大きな波紋を落した。何事かと振り返る人々の視線に晒され、レイフォンは動揺を噛み殺す。
「アルセイフ君、どうかしたかい?」
「あ、いえ、なんでもありません」
生徒会長の問いかけに慌てて首を振り、すみませんと俯き、視線を逸らす。さわさわと、漣(さざなみ)のような小声が室内に生まれ、再び答えの出ない会議へと埋もれていく。
視界の端に映る空は重く暗く、まるで行く先も判らぬまま迷走する都市自身を現しているかのようだ。
(そういう台詞はシャーニッド先輩の方が似合うのに)
普段なら思いつきもしないような思いが胸によぎること自体、自分の不調を示しているようで、レイフォンは目を閉じると緩く息を吐いた。
バレンタインの頃にUPしようかなー、と思って結局完成しなかったものを、完成しないなりになんとか文にしてみました・・・。
ちょっとまとまり無いのはご容赦ください(汗)
続くかどうかは、ちょっといまの時点では不明~!
そして予約投稿したつもりがなんか美味く出来てなかった予感!(ほろり)
結局自分で再構築しなおしました・・・orz
Comments(0)
No comments found.



Post a Comment