Facta non verba - 鋼殻のレギオス -
(無題)
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自律型移動都市は常に歩み続けている。
普段ならばあまり意識することは無い。だが、人々が寝静まった深夜になると、その足音がひそやかに息を吹き返す。緩やかに揺れる大地は、停滞を恐れるかのように一定のリズムを刻み続ける。
その都市の外縁部を囲むようにそびえ立つ柱の上へ腰をおろす青年がいる。エアフィルターの境界に生まれた風が、長い銀髪を微かに揺らしている。形の良い唇に浮かぶのは柔らかな笑み。だが都市の灯りを見つめる瞳は、まるで凍てついたかのような色だ。厳しくも透徹な視線は、都市の奥に潜むモノを探るように夜闇をへいげい睥睨している。
不意にしなやかな筋肉に覆われた背が僅かに震えた。上げた視線の先に浮かぶのは、淡い燐光を放つ念威端子だ。
「現れました。予定通りの位置です。側道は、指示通りに封鎖完了しました」
端子から響く声は緊張に濡れていた。しかし、それに返す青年の声は場違いなほどに明るく陽気な響きを持っていた。
「分かった。すぐに行くよ」
快活に応じた青年は、獲物を狙う獣のように大きく伸びをした。そのまま無造作に身体を前傾させる。自然、重力に引きずられた肢体は頭からまっすぐに地表へ向けて落ちていく―。
自由落下しながら、青年は全身に剄を巡らせる。全身を叩く強い風の中、笑みをは佩いたままの唇が一つの単語を生み出す。
「レストレーション」
起動鍵語に反応して眩しい光が生まれた次の瞬間、錬金鋼は本来の形を取り戻し、彼の四肢を包みこんだ。精緻な紋様が刻まれた手甲と脚甲は、白銀の輝き。それは格闘術にて戦う彼の、武器であり鎧でもある。
天剣授受者――サヴァリス・クォルラフィン・ルッケンスは刻々と迫る地表を気にもせず、我が身の調子を確かめるかのようにゆったりと拳を握り締めた。清々しいほどに剄の通りはいい。
「興奮するね」
耳に届く汚染獣の叫びに、全身の血が熱くたぎ滾る。それと同時に、頭の奥は氷塊を埋め込んだかのように冷えていく。戦いの予兆はいつも彼を悦楽の極みに連れて行くが、同じ強さで『常に冷静であること』を求めてくる。この二律背反がいい。矛盾を抱えたまま、都市を護る為に破壊の技を放ち続けるのだ。
柔らかく膝のばね発条を利かせ、着地すると同時に立ち上がる。薄く浮いた砂埃の向こうに見える異形の影へ、青年は目を細めて笑いかけた。
「さぁ、始めようか」
- END -
えっと、今日、誕生日なんです! なので、記念にアップ。
本当は冬の新刊用にと思って書いていたネタなんですが...。ああ、ページ数足りないので本にも載せちゃいますが!(爆)
あまり推敲できてないので誤字脱字あってもキニシナイで下さい... orz
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