Facta non verba ~鋼殻のレギオス~

 

 何気ない日常と、そして。

 スーパーに行ったら、偶然特売日だったらしくて、ものすごく色々と安かった。今日のバイトには弁当を持っていこうかな――とウキウキして帰宅後、寮のキッチンで料理をしていたら、あやうく「味見」と言う名目で級友たちにつまみ食いされそうになった。
「うーん、冷蔵庫に残して行ったら食べつくされそうだなぁ」
 バイトから帰ってからの朝ごはん兼と思って、少々多めに材料を買ったのがまずかったのだろうか。『こんなにあるなら食わせろ』と匂いにつられて突撃してきた男たちをキッチンの外へ放り出したのがつい五分前のこと。いまだに入り口の方からは、様子を伺うような視線がレイフォンの背中に突き刺さっている。
 そもそもヨーグルトですら食べつくされた前科があるのだ。あの時は色々と状況が悪かったのもあるが、みずみず「エサ」を置き去りに出来るほど、レイフォンの財布にも余裕はない。
 半分くらい、自室に置いておく? いや、夏地帯に入った今だと、室温もかなり上がる。腐りそうなので却下だな。バイト先にもって行く? 食べきれるかは不明だけど、休憩室の冷蔵庫ならココのような争奪戦が起きることも、まさかないだろう。
(あ。隊長に一緒に食べてもらえばいいな。確か今日、シフト一緒の筈だし)

 レイフォンは一つ頷いた後、作ったサンドイッチを全て使い捨てのランチボックスにぎゅうぎゅうと詰め込んだ。ちょっと入りきらなくてパンの端が潰れたが、まぁいっか、のヒトコトで終わらせる。リーリンに見つかったら怒られそうだが...。
 最後、紙袋にランチボックスと水筒を入れると、レイフォンはクルリと入り口を振り返った。ぎくっと身を硬くする人や、どぎまぎと視線を反らす男の間をすり抜けながら『バイトに行ってきますね』との言葉を残して寮の玄関へ足を向ける。やがて立ち去った後のキッチンへ駆け込む足音と、ゴミ一つ残さず綺麗に片付けられたテーブル(と、飲み物しか入っていない冷蔵庫)を見てか、絶望の悲鳴が届く。だが、そんなものは知ったことか――とレイフォンは笑う。
「働かざるもの食うべからず、だよ」



  
- END -

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